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zoom RSS ルイ・マル 『鬼火』

<<   作成日時 : 2005/11/18 00:56   >>

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今週はTSUTAYAのレンタル旧作半額週間。
私もそんなTSUTAYAの営業戦略に屈して、
DVDを3本借りてきました。
いろいろ過去に何パターンか試しましたが、
いくら安くても、週3本借りるのが限度です。
これ以上借りると、日常生活に支障ができてきます。
私はご覧のように映画好きですが、
生活のリズムを崩すような映画の見方はしたくないんですね。眠いし。
そう考えると3本がいっぱいいっぱいです。
なので、いつも「おすぎはすごいなぁ」って思ってます。
おすぎの言ってることに共感するとか、そういう問題ではなく。

今日はその3本の中の1本をご紹介します。
ちなみにそのうちの1本について、
私はその処遇にすごく苦慮してます。
本当は書きたいんですが、もし書くとすると、
8割以上がバッシングみたいな文章になってしまいそうなので。
でも本当は書きたいです。

まぁその映画をどうするかについてはとりあえず置いといて、
今日は別の1本について書きます。
この映画、すごく衝撃的な内容でした。
先日紹介した『気狂いピエロ』も衝撃的でしたが、
この映画も相当来ました。



『鬼火』



『気狂いピエロ』同様、いわゆるヌーベルバーグ作品。
監督はルイ・マル。
過去にこのブログでは、
『死刑台のエレベーター』『地下鉄のザジ』『恋人たち』と、
3本のルイ・マル作品を紹介してきましたが、
この映画はその中でも、とびぬけてインパクトのある映画でした。


30代前半のハンサムな男・アラン(モーリス・ロネ)。
若い頃は酒浸りの毎日、その結果中毒になり、
同時に生きていることをむなしく感じ始め、
ベルサイユの精神病院に入院していた。
彼にはドロシーという妻がいたが、そこに愛はなかった。
そんなある日、彼は自殺を決意する。
彼は自殺を実行するまでの48時間、
さまざまな旧友を訪ねる。
平凡な家庭生活を送る人々、
刑務所に送られたもの、麻薬におぼれるもの、そして晩餐会・・・。
それぞれの人生に接しつつ、
彼は街をさまよい歩く・・・。



とにかく衝撃的な映画でした。
なにが衝撃的かというと、
例えば私は今までいろんなインパクトのある作品を見てきたわけですが、
どれも映画として見れていました。
でもこの作品に関しては、そんなことも言ってられないくらいな感じの勢いで、
なんか夢に出てきそうなんです。

こういう映画はもはや、「いい」だの「悪い」だの、
そういう客観的な判断ができなくなります。
なのでいくら私が衝撃を受けたからと言って、
決して、「いい作品ですよダンナ!」と、
胸を張ってみなさんにオススメできないです。

いいとは思います。でもこの映画を「ダメな作品だ」と言われたら、
その気持ちも十分判ります。
そしてもしそう言われたなら、私はちょっとショックかもしれません。
それくらい他人事ではない感じのした映画です。


どのへんが他人事じゃないかと言うと、
この映画の主人公が、社会の波に飲み込まれるのを嫌っているところ。
この気持ちがすごくわかります。
こういう心理は青臭くて子供なわけですが、
そうとはわかっていつつも、とても理解できます。
こういう心情を描いた映画って他にもありますが、
これだけストレートに描いた映画ははじめて見ました。

だいぶテンションは違いますが、
似たような心理を描いた映画では、
今年私が観た映画の中で、『ゴースト・ワールド』という作品があります。
この映画は、ソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソンが主演で、
高校を卒業して社会に出ていこうという二人の女の子を描いた作品。
ここでスカーレット・ヨハンソンは、最初は反抗しているのですが、
徐々に仕事についたりしてなじんでいくのに対し、
一方のソーラ・バーチは社会になじめないというか、疑問を感じたままで、
二人の間は次第に距離ができていくお話です。
『鬼火』の主人公であるアランは、まさに『ゴースト・ワールド』のソーラ・バーチだと思います。
結末は違いますけど。いや、ある意味近いかも。
とにかく同じ心理だと思います。


平凡な生活や『確信』(←これはとても皮肉っぽい言い方)に背を向けるアラン。
早い話、逃げ回ってるわけですが、
この気持ちを私はすごく理解できてしまいます。
そして理解できてしまう自分に怖くなりました。
さらにその恐怖は、この映画のエンディングでピークを迎えます。
でも見終わった瞬間、なんか安堵してしまう部分もあって、
そんな自分もまた怖いんです。


アランには今で言う『ED』というバックボーンがありますが、
それは所詮スパイスです。
本筋は『社会vs個人』という永遠のテーマ。
しかもこのテーマを、ルイ・マルはきわめて露骨に表現していて、
こういう表現は狙って作れるものでもないと思うし、
また狙って作りたくもないテーマであると思います。
おそらくルイ・マルという監督さんは、
日ごろからこのことについてよく考えるタイプなんだと思います。
相当ずかしい人だと思います。
ひょっとすると、『死刑台のエレベーター』からはじまって、
『地下鉄のザジ』や『恋人たち』といった作品は、
この映画よりも前に作られた作品なので、
いろいろ撮ってみて、
たまっていたうっぷんがここで爆発した感じなのかも知りません。


技術的に言えば、最初にまずスタッフロールが全部流れます。
その分エンディングでぷつっと終わってしまうんですが、
これはよくできたしかけだと思います。
その方が結末をよりまっすぐに表現できると思うからです。
個人的に私の好みとして、スタッフロールは映画の前に流してしまった方がいいと、
かねがね思っていることもありますが。

その最後の最後の映像は衝撃です。
「それ言っちゃうんだ〜・・・」みたいに思ってしまいました。
でも途中からこんな結末をちょっと期待してた部分もありましたね。

よくないです。そんな期待。

できれば自分の子供には、こういう期待を抱かないような、
そんな純朴な青年に育って欲しいと思います。
でも私は期待してしまいました。やれやれ。

スガシカオの曲で、『Thank You』という強烈な歌詞の曲があるのですが、
シカオファンの方にはあの歌詞を想像していただければいいですかね。
でもあれはどちらかというと恋愛色の強い曲ですが、
これは人生全体が相手ですね。
そのへんもまた衝撃でした。


ちなみに音楽には、有名なエリック・サティの『ジムノペディ』が流れます。
本当に合います。(ジムノペディってこんな曲(試聴))


まぁ、エリック・サティもジムノペディなんて言葉も、今回はじめて知ったけどね。


でも有名なメロディーなので、
この音楽を聞いた人は誰しもが「あ〜」って言うでしょう。
言いました、私も。「あー」って。


ということで、なんか普通に街を歩いていて、
急に後ろから誰からに殴られるような、
そんな衝撃のあった映画でした。
でもなんかこの映画を見終わってしばらくたってみると、
ちょっと反面教師っぽく、「頑張らなきゃ」って気持ちになっている自分もいます。
結局最初から最後まで、主人公を美化していないところがよかったのかも。
こんな主人公を美しく描かれてしまったら、相当たち悪いです。


そうそう、『鬼火』は「おにび」と読みます。
でも『鬼火』をインターネットで検索すると、
芋焼酎がたくさんヒットしてしまいますので注意してくださいね。
あとうっかり一緒に原田芳雄主演の極道映画も出てきてしまうので、
それにも気をつけてください。
調べたい方は是非、

『鬼火 ルイ・マル』

とかでサーチングすることをおすすめします。


最後に、故・淀川長治さんが生前、
この映画やルイ・マルなどについてふれている文章がありました。
すごく共感してしまったので、載せておきます。
『淀川長治・新シネマトーク』

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
公開時に受験に行った際に池袋の文芸座で観終わった後の
見上げた夜空を今でも鮮明に思い出します。アランが飲んでしまって
彷徨するパリのモノクロで捉えた画面の美しさ。最後に読み終わる
本はスコット・フィツジェラルドの「グレート・ギャツビー」
です。村上春樹の新訳が出ておりますが、そして今、大阪でルイ・マル
特集をやっており中高年になった現在、アランに会いに行くか
迷っております。またあなたなりの感性で秀作があれば紹介してください。
tak
2010/12/17 22:14

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